アメリカ現地時間2021年3月14日、グラミー賞授賞式が開催されました。John Mayerがグラミーに出演したのは2019年のサプライズ出演以来2年ぶり、演奏したのはEd Sheeranと共演した2015年以来6年ぶりとなります。

2021年の授賞式

2021年はカントリーシンガー Maren Morrisとの共演で、彼女のヒット曲 The Bones を演奏していました。

こちらがグラミーでの演奏

この曲はKey = Dで、ギターソロ部のコード進行は I -> IV -> V -> VImです。リードプレイはペンタトニックスケールで、これぞザ・ジョン・メイヤーといったフレージングですね。

ただ全体的にあっさり目に仕上がっていて、この辺は曲の雰囲気に合わせているんだと思います。昔のJohnならもっとチョーキングがねちっこく、ブルージーな雰囲気に仕上げてくるだろうなとか思ったり笑

良いソロなので興味あられる方はコピーしてみてはいかがでしょうか。

ジョン・メイヤーの使用機材

今回のテーマである機材ですが、まず全体を通しては2019年のツアー時からあまり大きな変化はありません。2019年のツアー中はペダルの入れ替わりも激しかったですが、COVID-19の影響でしばらくライブなどもなく、新しい機材をテストする機会もあまり無かったのかもしれないですね。

ギター

PRS – Silver Sky (Moc Sand)

リハーサルの模様

ギターはリハーサル・本番ともに、PRS – Silver Sky (Moc Sand)を使用しています。確かに今回の曲調的にはヴィンテージストラトよりもこのギターが合っている気がします。

以前記事にしましたが、Silver SkyのMoc Sandはフィニッシュが変更になっていますが、グロス仕上げサテン仕上げのどちらを使っていたかはわかりません。

Johnはヘッド裏にシリアルナンバーの記載がないプロトタイプ的なSilver Skyも使っていましたが、今回は(わかり辛いですが)ヘッド裏にシリアルナンバーが書かれているので別の機体のようです。

グラミーではうっすらシリアルナンバーが確認できる
このSilver Skyはシリアルナンバーが記載ありません。2019年ツアーの写真を見るとシリアルのないSilver Skyを使っていることがたまにあるようです。

ピックアップのポジションはフロント+ミドルのハーフ(いわゆる4thポジション)ですが、曲の後半はフロントのみ(5thポジション)になっているようです。曲の後半のアウトロソロで4th→5thにポジションを変えて、音をよりパワフルにするのも昔からのJohn Mayerの常套テクですね。

アンプ

グラミーで使用されたアンプたち

今回使用されたアンプは下記2台になります。

Dumble – Steel String Singer #004

JohnのSteel String SingerについてはContinuumのレコーディングでも使われたシリアルナンバー#002が有名ですが、このグラミーで利用したのは#004で2016年ごろにJohnが入手したアンプになります。

このアンプの詳細に触れるのはまた別の機会にしますが、一時期よく利用しており気に入っていたアンプのようです。入手当時は水色のキャビネット(スピーカーではなく、アンプヘッド筐体)を使用していましたが、その後黒いキャビネットに入れ替えられています。

2017年1月、The Search for Everything Tour直前での画像です。

Two Rock – Custom Reverb Signature

Two Rock – John Mayer Signatureのベースになったアンプです。Custom Reverb Signature(以下、CRS)はTrio ~ Continuumツアーまで使用されていましたが、2007年にTwo Rock – JM Signatureが出てからは登場の機会はあまりありませんでした。

久しぶりの復活の理由は謎ですが、ロックダウン期間中に家中のアンプを引っ張り出して弾き比べしたりしたのでしょうか。

ランプの色が青であり別個体ですが、有名なこの演奏もTwo Rock – CRSでした。
こちらはTwo Rock – JM Signatureの最終テストの時の様子。
2007年の完成以降、いまだにJMのステージには無くてはならないアンプとなっています。

エフェクター

エフェクターも2019年のツアーで使用したものからピックアップされています。ツアー時のペダルボードは巨大ですが、この日の演奏は1曲のみなのでシンプルにまとまっており、最新のJM機材を知るにはちょうど良いラインナップになっているかと思います。

画像のそれぞれのエフェクターは下記のとおりです。

  1. TC Electronic – Polytune 3
  2. Keeley – Katana Boost:ブースター
  3. Solodallas – Storm:ブースター
  4. Black Pedal (Klon – Centaurタイプ):オーバードライブ
  5. Ibanez – TS10:オーバードライブ
  6. Providence – DLY-4 Chrono Delay:ディレイ
  7. BOSS – CE-2:コーラス
  8. Strymon – Flint:リバーブ&トレモロ

今回のグラミーでは具体的にどのペダルをいつ踏んでいるかなどはわからないですが、この中からいくつかペダルをピックアップしご紹介しようと思います。今回は、近年Johnの機材として加わったもの中心です。

Solodallas – Storm

2019年頃からJohn Mayerが使用しているブースターです。サウンド的にクリーン~ローゲインブースターとして使っていると思われます。

このペダルのルーツになったのは、Schaffer-Vega Diversity Systemという70年代後半に販売されていたワイヤレスシステムだそうで、安定性とサウンドを買われて超大物ミュージシャンたちがこぞって利用していたようです。

AC/DCのAngus Youngはサウンドをあまりにも気に入り、レコーディングにこのワイヤレスシステムを持ち込みBack in Blackのレコーディングに使用したという逸話もありました。

そんなワイヤレスシステムのサウンドを現代に復刻させるという名目のペダルがこのSolodallas – Stormです。

実はその本家ワイヤレスシステムはJohnが敬愛するGrateful DeadのギタリストJerry GarciaとBob Weirも使用していたようで、その影響からJohnはこのペダルに手を伸ばしたのかもしれません。

The Schaffer Replica® - Storm – SoloDallas LLC

ジョンが使っているのは旧デザインかつ、グリーンマーブルの限定バージョンのようです。SolodallasがInstagramで先日、そのデザインの復刻をちらっと匂わせていましたが果たして・・・。

このライブでのテーマ部(動画0:06~)で踏んでいるのがStormですね。昔はこの部分でKatanaを踏んでいましたが、2019年ごろだとこのペダルを使っていることがありますね。

Katanaは長年主力でしたが2019年以降、ペダルボードから外れていることも何度もありました。そんな中、グラミーではこのStormとKatanaが共に並んでいたので、使い分けが気になりますね。

Black Centaur (Klon – Centaurタイプ)

Klon – Centaur(ケンタウルス)に見えるペダルですが、Johnが10年以上愛用しているシルバー絵無しではなく、黒色の個体です。2019年頃からこの黒いケンタウルスはペダルボードに登場していますね。

ちなみにマレーシアのクローンアンプブランドであるCeriatoneがCenturaという黒色のケンタウルスクローンを作っていますが、このBlack CentaurはCeriatoneのペダルではありません。またケンタウルス特集の記事を書いた際に、この辺りには触れようと思います。

Providence – DLY-4 Chrono Delay

国産ブランドProvidenceにより2010年にリリースされたデジタルディレイペダルです。

これも同じく2019年ごろから使用されています。John自身のライブではこのペダルでタップテンポ機能を使っていますが、このグラミーでの演奏では曲のBPMに合わせて事前にディレイタイムを設定しているのではないかと思われます

グラミーの演奏も、ディレイがしっかりかかっており、いつものアナログディレイ主体のサウンドと比べるとクリアな音色ですね。

普段Johnはディレイが足元に3つあったりしますが、今回はWay Huge – Aqua Pussが無くこのディレイだけという点でなかなか面白いセレクトだと思います。やはり自身のライブの時とは音作りのコンセプトが違うんでしょうね。

2014年の画像ですが、Larry Carltonも使っているらしいです

(2021.4.5 追記)Providenceのご担当者の方にリプライ頂いて知ったのですが、本ディレイはPink FloydのギタリストDavid Gilmour も使っていたとのこと。海外のギルモアファンサイトに写真もありました。

JohnはGilmourのことは好きなようで(Pink Floyd自体はあまり聴いていないようですが)、Gilmourが愛用していたエコーユニットBinson – Echorec実機やそのモデリングエフェクターなどもレコーディング、ステージともに使用しています。

Providenceのディレイを使い始めたのも、もしかするとGilmourの影響があったのかもしれません。

BOSS – CE-2

目立ちこそしませんが、Johnの長年のキャリアでは何種類ものBOSSのペダルが使用されてきました。しかし、ヴィンテージBOSSは初めてかもしれません。

ジョンの足元にあるのは真っ黒に塗られていますが、ノブなどからこのペダルと推測されます。複数画像を見た限り近年のCE-2Wでもなさそうです。

2019年ごろはこのペダル以外にも黒く塗ったペダルを何個か使っており、(Black Centaurも同様ですが)John専用に改造されているのかもしれません。グラミーでの演奏でも、かなり強めにコーラスがかかっています。

John自身のライブではHelplessI Don’t Trust myself (with Loving You) のソロでこのペダルや別のコーラスペダルを使っていたりします。

レコーディング時にどの機材を使っているかは不明ですが、しっかりコーラスサウンドが聴き取れます。

(2021.3.20 追記)下のTweetの動画ですが、2019年2月の演奏です。この時は黒色ではなく、水色のBOSS CE-2が足元に見えています。古いペダルなので流石に直列にはつながず、Looperペダルで別ループにしてONにするときのみ信号が通るようにしているのでしょうか。素晴らしいサウンドですね。

まとめ

久しぶりのバンド形式での演奏であり、かつ機材面では近年のJohn Mayerの機材を知るのにちょうど良いラインナップだったためご紹介してみました。

特にエフェクターは2019年のツアーで新入りが増えています。その一部が今回のグラミーでも使用されているという形ですね。

そろそろプレイスタイル系の記事も書きたいと思ってはいますが、機材面についても引き続き特集していきます。

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ジョン・メイヤー・データベースさん (@johnmayer_db) / Twitter