機材紹介の第1弾は、ジョン・メイヤーが利用するPaul Reed Smith(PRS) – Mccarty 594を特集します。おそらくこのギターにここまでフォーカスした記事/情報は世界中でこの記事が初かと思います。

Paul Reed Smith – Mccarty 594

ジョン・メイヤーが2016~18年頃にDead and Companyのツアーで愛用していたギターがこちら。シルバーカラーのPRS Mccarty 594です。

ジョンが2018年までのDead and Companyのツアーで一番使用しているのはPRS Private Stock Super Eagle(下記のサンバーストのギター) ですが、その次に登場頻度が多いギターとなります。

Mccarty 594 のサウンド

Mccarty 594は元々、PRS創始者Paul Reed Smith氏がヴィンテージのGibson Les Paulを意識して開発したものになっています。

ジョン・メイヤーはGibson系ギターとしてはES-335、SG、Les Paul Juniorなどを使用していましたが、Les Paul Standardはほんの一部の例外を除いて殆ど利用しておらず、彼のキャリアの中でLes Paul Standardライクなサウンド(=所謂メイプルトップ・マホガニーバック・ハムバッカー)を聴けるのは本ギターが初といっても過言ではありません。

サウンドはコツコツとしたクリスピー感のあるアタック音が強烈で、音源を聴いても音抜け抜群、存在感のある音色になっています。

デッド・アンド・カンパニーでのサウンド

Dead and Companyのライブではジョンは基本的にギターを2本使い分けます。ギターサウンドのおおよその比率としては下記の通りです。

  • デッド・アンド・カンパニー名義のライブ(2018年以前)
    • Super Eagle(ホロウボディ&プリアンプ内蔵&ハムバッカー):8割
    • Mccarty 594などのソリッドボディ&ハムバッカーサウンド:2割

本ギターは登場比率としてはあまり多くないのですが、ブルージーなサウンドが求める楽曲ではかなりの確率で登場しています。早速このギターを使用したライブの音源を紹介していきます。

Cold Rain and Snow (2018/2/17)

使うコードはDとEだけというシンプルな楽曲の上にジョンのブルージーなギターが乗ります。この演奏ではPUの3ポジションを頻繁に使い分けており(例:2:56からリアPUのソロ、3:13からフロントPUにチェンジ)、各ポジションで素晴らしいサウンドを聴かせてくれます。

アンプはPRS J-Mod 100とFender Dual Professionalのようです。

Easy Wind (2017/6/15)

該当楽曲は15:21から

こちらもブルース系の楽曲で、フロントPUのクリスピーなアタック音とジューシーなサウンドが共生しています。17:51~18:00あたりの12フレット付近のサウンドなんて、いつまでも聴いていたいような理想のブルースロックサウンドです。

アンプはDumble Dumbleland SpecialとFender Dual Professionalのようです。

All Along the Watchtower (2018/6/8)

https://www.youtube.com/watch?v=GZ1NJnY3-J0

ジミ・ヘンドリックスの演奏であまりにも有名なこの楽曲もカバーしています。イントロ0:25秒付近のクランチサウンドは心地よいですし、2:47からのオーバードライブサウンドはしっかり歪んでおりディレイが深めにかかっているにも拘わらず、音の芯の部分がはっきりしており絶品です。
動画が消えてしまっていました。(2021.3.15追記)

All Along the Watchtower(2018/6/23)

2018/6/8のライブ映像が消えてしまっていたので、1つ追加しました。2:36からや4:08からのリードプレイはしっかり歪んでいる中にも音の芯がしっかりあり、理想のオーバードライブサウンドという感じです。

All Along the Watchtower (参考用)

今回の記事とは関係ないですが、ジョン・メイヤー名義でのライブでも過去数回、この楽曲をストラトを使用して披露しています。デッド・アンド・カンパニーでは若干原曲のボブ・ディラン風味の演奏でもありましたが、ソロライブではゴリゴリのジミヘンバージョン。全ギターキッズが憧れる、まさにザ・ジョン・メイヤーという演奏。

0:15のイントロ一発目でこのアルバート・キング~スティービー・レイ・ヴォーン直系リックをぶち込んだ時点で、私はスタンディングオベーションです。

ジョン・メイヤーのソロ名義でのサウンド

ジョン・メイヤーのソロ名義でのライブでも2019年以降、このMccarty 594は使用されています。現在確認している曲は以下の2曲です。

Edge of Desire (2019/3/27)

2009年のアルバムBattle Studiesに収録されて以降、ジョン・メイヤーのセットリストでは高頻度で出現する人気曲ですが、この曲はこれまでずっとGibsonの1961年製SGが使用されていました。2017年のライブでは一部PRSの謎の赤いギター(おそらくプロトタイプ)の利用も見られましたが、そのギターもマホガニーボディのようでした。

やはりトップにメイプルが貼ってあるせいなのか、同じハムバッカーといえどもより深みのあるリッチなサウンドが聴けます。この演奏ではソロのオーバードライブサウンド以上に、バッキングのクリーン~クランチの単音弾きサウンドが心地良いですね。

Dreaming with a Broken Heart (2019/9/14)

2006年の傑作アルバムContinuum収録ナンバー。Continuumツアー時にはGibsonのヴィンテージLes Paul Juniorを使用していました。マホガニーボディ+P-90ピックアップならではの心地よいサウンドを当時聴かせてくれていましたが、2019年のこのMccarty 594の演奏ではやはり音色がリッチになっています。1:22からのピアノユニゾンのアルペジオは、ある意味なんてことのないフレーズなのに、ずっと聴いていたいサウンドですね。

Edge of Desireもそうでしたが、ソロ名義のライブだとMccarty 594とオーバードライブがなんとなくマッチしていないような気がしていて、クランチまでのサウンドの方が私は好みです。
※2019年のライブはペダルボードが巨大で毎回ペダルが違っていたりするので、彼の中でも試行錯誤があったのかもしれません。

このMccarty 594は市販品なのか?

このギターが優れたサウンドを持ち唯一無二のギターであることはご紹介した通りです。このギターサウンドを我々は手に入れることはできるのでしょうか?

カラーリング

まず目を引くシルバーのカラーですが、このカラーリングはPRSのレギュラーラインのMccarty 594では存在しません。国内外の楽器店のオーダーで近しいシルバーのギターは出ていますが、どれも色味が若干違うような気がしています。ジョン・メイヤーの機体はシルバーのマッチングヘッドですが、ここまで再現できている機体は世界中探しても見当たらなそうで、ジョン・メイヤーのために特別に作られた個体であることは確実だと思われます。しかしヘッドにはイーグルインレイ(PRS最上級Private Stockの証)ではなく、通常のスクリプトログが刻まれており、どこまで特別スペックになっているのかは定かではありません。

ピックアップ

カラー以外のスペック面でいうと少なくとも1つだけ、市販モデルとの明確な差異があります。ピックアップです。海外のファンサイトやフォーラムで画像と共に議論されていますが、市販品のMccarty 594のピックアップである”58/15 LT”ではなく、Private Stock Super Eagle I & IIに搭載されていた”58/15 JM”が載っています。Super Eagleはホロウボディかつプリアンプ&トレブルブースター搭載という特徴的スペックのためPU単体でのサウンドが想像できず、そもそも私も弾いたことがないため、この”58/15 JM”と”58/15 LT”がどこまで違うのかはわかりません。”58/15 JM”は単体販売はされておらずですが、もし販売されれば大枚はたいてでも購入するので、PRSの方・代理店Korgの方ぜひよろしくお願いいたします。そしてSuper Eagleをお持ちの方がいらっしゃれば、PU乗せ換え実験にご協力いただけると感謝感激です。

指板材 – アフリカン・ブラックウッドなのではないか?

あと1つ、私が市販スペックとの差分として怪しいと睨んでいるのが指板材です。

色々な動画や画像を見ていると、通常のインディアン・ローズウッド指板と比較するとどうも指板が真っ黒に見え、近年PRSの高級機種でもちょこちょこ採用されているアフリカン・ブラックウッドを採用しているのではないかという仮説を立てました。

ただし、今やジョン・メイヤーはPRS社にとっての最重要人物であり、今後の社運を握っているといっても過言ではありません。そんな彼なので仮に普通のインディアンローズウッドだとしても最高級の木材があてがわれるはずであり、色だけではもちろん判断できないです。

ですが、指板の色の他にも私がアフリカン・ブラックウッドなのではないか?と仮説立てをした理由が3点ありましたのでご紹介します。真実はわからないですが、何か情報をお持ちの方がいらっしゃったらコメントいただけると大変ありがたいです。

根拠1:PRS Private Stock Super Eagle II

私が指板材なのでは?と想像してるのが、近年PRSの高級機種でちょこちょこ採用されているアフリカンブラックウッド。デッド・アンド・カンパニーでのメインギターといえばSuper Eagle Iですが、実はIとIIの間には違いがあります。

  • Super Eagle I
    • 指板材:ブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)
  • Super Eagle II
    • 指板材:アフリカン・ブラックウッド

ということで、Super Eagle IIで使われている木材なのです。ライブでの出番は少なかった機体でしたが、Iとは敢えて違う指板材を使って差異をつけています。

根拠2:PRS Private Stock Collection Series IX

そして2015年付近ジョン・メイヤーがPRS使用初期で使っていたギターはこちら。

この動画はこれはこれで、トレモロを使ったスライド風フレージングやB.B. キング風フレージングなど大変勉強になる動画ですが、ここで使われている青いギターがPRS Collections Series IXです。この動画以外でも2016年頃のデッド・アンド・カンパニーのライブでは、シルバーのMccarty 594の前身ポジションでPaul’s GuitarやGibson SGなど共に活躍していました。

こちらのイケベ楽器さんのサイトに詳細説明がありますが、これもアフリカン・ブラックウッドを使用しています。

根拠3:オーダーモデルのMccarty 594

イシバシ楽器さんのオーダーモデルでSilver風のMccarty 594が2018年ごろリリースされており、ジョン・メイヤーライクなルックスが魅力的ですが、なんとこのギターもアフリカン・ブラックウッドを採用されています。このルックス的には絶対にジョン本人の機体も意識されていると思いますが、もしや指板材も本人所有機と同じにした?などと想像してしまいます。

ジョン・メイヤーの新たな愛機として

以上、このMccarty 594の魅力とスペックについてご紹介させていただきました。

2014年までのジョン・メイヤーはFender Stratocasterが9割で本人曰く”Strat Guy”だったのですが、2015年以降のデッド・アンド・カンパニーという新たな舞台ではハムバッカーサウンドが大幅に増えてきました。

メインギターであるSuper Eagleのサウンドが素晴らしいのは言うまでもないのですが、ブルースプレイヤーとしてのジョンのサウンドが楽しめるという意味では最高の愛機であるといえましょう。

いずれ記事にしようとは思っていますが、実は2019年以降はデッド・アンド・カンパニーでの使用ギターも大きく変わっており、本特集のギターとは違うサンバーストのMccarty 594がメインになっており、3時間長のライブをそれ1本で弾き通すほど愛用されています。シルバーのMccarty 594の出番が減っているのは残念ですが、ジョンのMccarty 594への愛はむしろ大きくなっているのかもしれません。次なるツアーでの演奏が楽しみでなりません。

初回なのに、ジョン・メイヤーのイメージとは若干異なるギターを特集してしまいましたが、次回以降もプレイスタイルや機材などをまとめて思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。

Mccarty 594の他に、ジョン・メイヤーのシグネイチャーモデルであるPRS Silver Skyの2021年仕様変更についてまとめた記事があります。2021年2月時点ではおそらく日本国内で唯一の記事になります。こちらも是非どうぞ。
【国内初情報】PRS Silver Sky – 2021年モデルの仕様変更とは(ジョン・メイヤー・シグネイチャー) – John Mayer Database